愛があればいーのだは、「同級生と再会して恋愛に発展」、恋愛物でもあり、お仕事物でもあり、また地方出身者が都会での自己確立をするまでの時間を追う成長物と、誰にでも思い当たることばかりが取り上げられています。
短いながらもギュっと内容が詰まったタイトル通りのストーリー。
作者・いくえみ綾の一筋縄ではいかない美意識と世界観が余すことなく映し出されている秀作です。
愛があればいーのだについて
作者:いくえみ綾
巻数:全2巻
簡単なあらすじ
北海道から上京した高校の同級生二人が仕事を通じて再会し、いつしか愛を見出していきます。ただし状況は普通ではありません。
今は主人公はAD、ヒロインは女優になっているのです。ADとなった水谷は女優となったかつての同級生の美津子を忘れられないまま、それを自覚することすらなく仕事づけの日々を淡々と送っていたはずでした。
ある時人事異動を言い渡されて水谷の歯車がきしみだすまでは。ドラマ部門への配属替え。そこには今や売れっ子女優となったあの美津子がいるのです。
一度は離れたはずの二人の運命の糸は時に絡まったり時に切れたりしながらもう一度手繰り寄せられていきます。
17の頃に教室で出会った二人がもう一度巡り合うのはドラマの撮影現場。本来は越えがたいはずのこの落差を二人は少しずつ乗り越えていきます。
主人公の上司である永田さん、主人公の隣人であるルミさんが他の主な登場人物。彼らの生き様や恋愛模様がサイドストーリーになっていて、ここがクセモノ。彼らは時に恋敵として、時に状況を変えるキーマンとして、主人公の運命そのものを決定的に左右していきます。
全編が見どころ!
淡々としていながらも劇的なストーリーと、美しいコマの連続。全編通して見どころ満載。
仕事とは何か、故郷とは何か、過去とは何か、友達とそうでない人の違いは何か。こういった主人公に突き当たる人生の問題は淡々と、でも劇的に、美津子との再会を通じてすべて解決されていきます。
またもう一つの見どころは暗くて地味だったはずの美津子がきれいになっていく過程。かつて高校生だった水谷が美津子にいった些細な一言「前髪あげれ」。この言葉をキッカケにドラマティックに美津子の人生が変化していくスピード感は圧巻です。
こんな人におすすめ!
男性側の気持ちの動きや目線が主軸になっている漫画です。
恋愛するときの男性心理をたどりたい人にまずおすすめ!また女性の生き方がどこか辛辣に、そして冷静に描かれていることがポイント。
主人公を挟んでいるこの二人は全くタイプは異なりますが、しかしどちらにも綺麗ごとで済まされない普遍性と現実感があります。この先きれいになりたい人や、複雑な社会の現実を前に立ちすくんでしまっている女性にもおすすめです!