思春期の青春、苦悩と純愛の物語「坂道のぼれ」という作品は、高校生が人生に悩みながら、お互い理解し合える相手を見つけ、一歩ずつ進んでいくドラマです。
そんな不器用で素敵な二人の静かで温かいストーリー「坂道のぼれ」をレビューします。
坂道のぼれについて
作者:高橋亮子
巻数:全4巻
簡単なあらすじ
東京で進学校に入りながらも、学校に馴染めず、地方の全寮制女子高に入学し直した、柚木亜砂子、地方の有名進学校に通いながら、ある出来事から徐々に不良と言うレッテルを貼られるようになった新田友、二人が出会ったのは坂道をのぼった先でした。
この出会いにより、二人の新しい人生の扉が開くのです。
「坂道のぼれ」はこんな素敵な作品
「坂道のぼれ」は漫画なのですが、ポエムを読んでいるような文学的側面が有り、その世界にスーッと引き込まれてしまいます。高校生の学園ものなのに、学園ドラマと言うより、思春期の純愛人生ドラマと言う感じです。
作者、高橋亮子先生の作風でもあるのですが、ストーリーが静かに進んでいく中から、奥の深いファジーな感動が広がってきます。
主役は二人共とても物静かなタイプなのに、どうしてこんなに存在感があるのだろうか、と思います。高校生で人生の挫折を味わい、苦悩し、そんな中で出会い、共感し、惹かれ合って、共に歩いていく、青春と純愛の感動に溢れた作品です。
この漫画に夢中になっている時は、日々の些細な事なんてどうでもいいや、と思えるぐらい入り込みました。名作ってそんな力があるのですね。
いつまでも純粋な輝きを持つ主役の二人
亜砂子も友もとても真面目で頭が良く、それだけに相手のことを考えてすぎてしまい、自分の本心を上手く伝える事が出来ません。
高校生ならもっと自分のやりたい事や好きな事を我儘放題に言って良いのに、なんて我慢強くて不器用な高校生なのだろう、大人になって読み返すと特にそんな風に思ってしまいました。
二人には共通点が沢山あります。その一つが、二人共出来過ぎた家族のはみ出し者、という点です。そんな状況で亜砂子と友は出会い、惹かれ合い、共に将来の希望が持てるようになるのです。
苦しい中でも、この出会いによって希望の光が見えたのです。まだ自分たちはこれからなんだ、頑張って生きていかないといけないね、という感じです。
周りの大人はとても勝手で、そんな大人の言う事が受け入れられない、二人はとてもピュアなのです。そんな大人になるものか、そんな大人ならならない方が良い、本当にその通りです。
私も彼らの言う事や思いにすごく共感して、まるで自分も漫画の中の一人物になったように浸っていました。
これだけは言いたい
とにかく友くん(ここでは敢えてくんを付けます)が半端なく魅力的なのです。頭も良くて、容姿も良くて、硬派でカッコいい、永遠のあこがれの人です。
まだ高校生なのに妙に落ち着きがあって、堂々としていて、近くにいたら絶対見惚れてしまいます。
この本が描かれたのは1970年代後半で、私が読んだのはもう少し後ですが、その頃の中高生には、かなりの友くんファンが居ました。
さいごに
久々に読み返して、改めて思いました。今読んでも昔と同じような感動が沸き上がってくる漫画って数少ないと思うのです。
作られてから約四十年になりますが、今なお色褪せることのない、昭和時代の不朽の名作と呼べる漫画作品だと思います。坂道をのぼったら、あなたの人生も素敵な方向に変わるかもしれません。