一生一人の人を思い続ける自信がありますか?この作品では一生一人の男性を思い続けた故に傷つく主人公が描かれています。
そんな人に出会えて幸せなのか不幸せなのか分からない。
けれど、一途に一人の人を愛し続けられるのはやはり素晴らしい事なのでしょう。
今回は『有閑倶楽部』で有名な一条ゆかり先生の代表作『砂の城』をレビューしてみたいと思います。
砂の城について
作者:一条ゆかり
巻数:全7巻
あらすじ
フランスの貴族の家である女の子が産声をあげました。その同じ日にその家の前に捨てられていた男の子。
おめでたい日だからとその家にひきとられ、二人は兄妹のように育てられます。
女の子はナタリー、男の子はフランシス。
二人は順調に成長し、思春期を向かえるとお互いを意識するように。身分が違い過ぎるからと反対していた父母も二人の熱意に負け、結婚を許します。
ところが、ナタリーの父母が事故で他界。
二人の結婚は親戚達に猛反対され追い詰められた二人は海に身を投げてしまいます。ナタリーは助かりますがフランシスは行方不明に。
しかし、傷心のナタリーにフランシスを見たという情報が寄せられ、ナタリーはフランシスを探しに行くのでした。そこでフランシスを探し出すことができたものの、彼は記憶を失くして他の女性と結婚し子供がいました。
彼を諦め、帰ろうとした矢先、フランシスはナタリーの事を思い出します。
ところが直後に事故で亡くなり妻も後を追うのです。
ナタリーはフランシスの忘れ形見である男の子を引き取り、同じフランシスと名付けて育てる事にしました。父親とそっくりのフランシスに惹かれてしまうナタリー。年の差は17才です。
葛藤するナタリー、そしてフランシスは…?
見どころ
『砂の城』というタイトルの通り、幸せになりそうになるとそれを壊す何かが起きてしまいます。これでもか、これでもかとナタリーの恋の邪魔をする運命。
もうフランシスという人の事は忘れてしまえば余程幸せなのにと思います。それが出来ないナタリーの不器用さと純粋さ。
心をコントロール出来たらどんなに良いでしょう。
でも、命をかけてしまう様な恋が出来ることはある意味幸せでもあります。それだけ深く強く相手の事を思える恋愛ということだからです。相手を思い、相手からも思われているのに恋が成就しないって悲しいです。
フランシスの子供を引き取った時にナタリーの運命は決まってしまいます。それはつまり、一生をフランシスという男性に捧げたという事ですから。それをせずに、他の人と結婚する道が無かったわけではありません。
しかしナタリーにはそれが出来なかったのです。
この選択は思いもよらぬ方向へ彼女を導く事になるのですが、この先はこれから読む方のために言わずにおきます。
フランシスを思い続けるナタリーを見守り続ける周りの人々、子供のフランシスが成長する中で出会う人たち、たくさんの物語がからまって見応えのあるものになっています。
17才年下のフランシスとナタリーはどうなるのか?
そのあたりも見どころの一つですね。
よろしければ一度お手にとって見て下さい。
こんな人におすすめ!
とにかく濃い恋愛ドラマが好きな方。
本当に人を愛するとはどういう事かと考える方。
そういう方達にとってこの作品は手応えのあるものになっていると思いますよ。