今回は「ボーイズラブは好き、でもあまり過激なのはちょっと…」そういう方が安心して読めるマンガ『楽園まであともうちょっと』をご紹介したいと思います。
楽園まであともうちょっとについて
作者:今市子
巻数:全3巻
簡単なあらすじ
物語は、借金取りの浅田貴史と倒産寸前の弱小旅行会社『楽園企画』社長、川江務が晴れて結ばれるまでの、周囲を巻き込んでのドタバタラブコメディーです。
元妻とその父親がやっていた借金まみれで潰れる寸前の旅行会社の社長に成り行きで納まってしまった川江務。知らない間に元妻の連帯保証人にまでさせられてて。でも、持ち前のバイタリティーで彼女と一緒に会社を運営していきます。
そんな彼に、その会社の借金取り担当浅田貴史は、恋人は他にいるのに惚れてしまいます。川江務も浅田貴史を好きになってしまいます…がしかし、紆余曲折でなかなか二人は結ばれない…。
見どころはどこ?
この著者の作品全般に言えることなのですが、単に主人公ふたりだけの物語ではなくて、その家族やらご近所さんやらが複雑に絡み合って、ひとつの人間ドラマとして、大人の鑑賞に耐えうる物語なんですね。
ここに出てくる脇役さんたち、元妻やご近所やくざ、親や兄弟や友人や…みんな強烈な個性の持ち主で、でもとてもチャーミング。特に脇役女性はとても魅力的です。
一応BLジャンルに分類されるのでしょうが、それありきではなく、各キャラクターがそれぞれ自分の人生を一生懸命生きていて、たまたまその中の何人かは「同性愛者」だった、というだけで、誰もが私たちと同じ喜怒哀楽の渦巻く「日常」を生きている、という普通感がたまりません。
男同士の濡れ場もサラリとしたものなので、殊更BLに関心があるわけではなくどちらかというと苦手、という人もそれなりに安心して読めます。つまり「人間ドラマ」としてメチャクチャ面白いのですね。ちなみに旅行会社に来るお客さんたちも癖ありで、笑えるしホロリともさせられます。
能天気で逞しく生活力溢れる川江務。現実にこの状況だったら相当悲惨だと思うのですが、元妻と一緒にすごいパワーでやくざでも何でも利用して旅行会社を切り盛りしていく。
借金返すために本職の他にも何でもこなす。そんな彼に、浅田貴史は呟きます。「だけどこれを“才覚”とでも呼ぶのだろうか。手段さえ与えられれば確実に結果を出してる。驚いた。工夫と努力が確実に結果につながる仕事…うらやましい…」誤解が誤解を生んで三角関係になったり四角関係になったり?とにかく笑いあり涙あり、時にジンと哲学あり。
でまた終わり方がまたいいんですね。ほっこりして「みんな幸せ」って。
こんな人におすすめ
BLが好きだけど、でもちょっと躊躇している人、あるいは普通に人間ドラマが好きな人。そんな方に読んでいただきたいです。
このカップルが今でもうまい具合にやってることを願わずにはいられません。 読み終わった後もそんな風に思ってしまう素敵な作品です。
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