人生の中で僅かな回数しか体験しないであろうこの儀式は、数は少なくても内容はとても重たく大切なものです。
この物語はそんな葬儀業で働く方々が、何を思って遺族と触れ合っているのか?そもそも葬儀の意味とは何なのか?そのようなことを教えてくれる作品です。
おとむらさんについて
作者:大谷紀子
巻数:全4巻
あらすじ
20代後半の売れない女優、音村いづこは、その日も殺される女の役をこなしていました。
スタッフさんに幸薄女をやらせたら音村さんが一番だね、なんて言われるが全然嬉しくはない。私は一生このまま幸薄女の役を続けていくのかしらと思い続けていたところに一本の電話が。
式場の司会をしてもらいたい。
それは仕事の依頼を伝える電話でした。早速スーツに見を包み結婚式の会場へと向かう音村いづこ。
しかし彼女は現場についてからとんでもない勘違いに気づくことになります。
式場とは、結婚式のことではなく、お葬式のことでした。お葬式を担当する若く整った顔立ちをした男性に、なに勘違いしたの?じゃ無理かな?と挑むように言われて、ムッとした音村は大丈夫ですと葬儀の司会を行うことになります。
そして、この体験が彼女のその後の方向性を大きく変えることとなっていくのです。
見どころ
この作品の素晴らしい点は、普段はあまり意識することのない葬儀という行事が、いかに重要で、そして尊いものかを教えてくれる点です。
その人が生きてきた人生の総決算がお葬式であり、故人の思い、残された親族の悲しみや故人との大切な思い出が、全て詰まっているのがお葬式。そんな儀式だからこそ、素晴らしい式にすることができれば、故人の思い出とともに、故人への温かい感謝の気持ちを皆の心にいつまでも残すことができるのです。
それとは反対に、適当な葬儀になってしまえば、それは後悔の念となって、親族の心の片隅にいつまでも暗く残り続けることとなります。
だからこそ、音村いづこはその現場にいたい、故人の人生を皆の気持ちを見てみたい、っして、素晴らしい思い出を作ってあげたい、と強く思うようになりました。
教育係である青年は辛い過去を持ちながらも、人々に最高の思いを抱いてもらえるように、素晴らしい葬儀をいくつも作り上げてきました。そんな彼に音村は惹かれていきます。
彼の遺族に対する優しさ、ご遺体を扱う時の所作の美しさ、そして、彼から時折垣間見える暗い影。
そんな人生ドラマが、人生最後の集大成である葬儀という場を通して見えてきます。
こんな人に見てもらいたい
人生とは何なんだろう?そんな哲学的なことを一度でも考えちゃったことの在る方には、ぜひ見てもらいたいです。
答えのヒントが、このマンガの中で見つけられるかもしれません。また、身近な人、大切にしていたペットを亡くした経験の在る方にも読んでもらいたいです。
葬儀に対する考え方や、故人に対する思いが変わると思います。