今回はちょっとホラー要素もあるけど心が温かくなるオススメ作品「おはよう、いばら姫」紹介したいと思います。といっても全然怖くないのでホラーが苦手な方も大丈夫ですよ。シリアスとコメディが絶妙なさじ加減で読みやすいです。
おはよう、いばら姫について
作者:森野萌
巻数:全6巻
あらすじ
主人公の哲は訳あって家政夫のアルバイトをしている高校3年生。
負けん気が強いけどホラーが大の苦手!それなのに「丘の上のおばけ屋敷」と噂される家でたった一人で暮らす少女・志津のお世話をすることになります。しかもその少女には秘密があるようで…といった感じです。
あなたは誰?
この物語のポイントはなんといってもヒロインの特異体質ではないでしょうか。
哲がお世話することになった少女は屋敷にほぼ幽閉されている状態です。初めて会った日に志津が見せた寂しい笑顔に哲はときめきます。ですが次に会った時には快活で表情がころころ変わる明るい少女でした。口調や服の好みなどその時々によって志津の印象が全く違うのです。その豹変ぶりに戸惑います。
そして、実は志津は幽霊に憑かれやすい「憑依体質」であることが発覚します!哲はそんな志津に恐れを抱いてしまい係わることを躊躇しますが、どうしてもお金が必要で仕事と割り切って接しようとします。哲にもなにか事情があるようで気になりますね。
少女の中にいるモノ
哲は志津の側にいることで彼女の中にいる霊のことを知っていきます。
快活な男性「ハル」や志津の祖父である「しのぶ」、オシャレで現代っ子の「みれい」、生意気な小学生「カナト」といった個性豊かな面々。表情の変化のない志津に代わって色んな表情を見せてくれます。でもこの笑顔を志津本人のものとして見たいとつい思ってしまいました。
霊にふりまわされる哲が微笑ましくてクスリと笑ってしまいます。
あなたを知りたい
しだいに哲は幽霊以上に志津を恐れていることに気づきます。
おぼろげで自分というものが全く存在しない志津。好きな食べ物さえわかりません。特異な体質が原因で両親とは疎遠です。それが悲しいことだと気づきもしないのが切なくなります。
哲は彼女を知りたいと思い始めます。自分のことを大事にしない志津に本気で怒る哲に胸をうたれました。大好きなシーンです。
哲自身も秘密を抱え、それでも真正面から志津に向き合っていくところが本当にいいと思います。
見つけた初めての「好きなもの」
そして志津の哲のことを知りたい、笑ってほしいと思い始める変化に感動しました。哲が苦しんでいるなら何かしたい。
そして自分から行動していく彼女はまぎれもなく「人間」でした。哲に抱きしめられながら「笑っている哲くんが好きです」と告白する志津、その時の笑顔がとっても素敵です。
この瞬間が見たかった!
積み重ねられた丁寧な描写あってのものだと思います。お互いの幸せを願えるっていいですよね。
最後に
ヒロインの設定や家の事情が複雑ですが、人形のようだった少女が人と心をかよわすことで泣いたり笑ったりふつうの女の子になっていく物語です。
大切な誰かのために何かをしたい、それが深く伝わってきます。ふたりの行く末を見届けてみませんか?
シリアスな作品が好きな方や、ふつうの恋愛モノばかりじゃ物足りない!そんな方に是非オススメしたい作品です。