三百年の時を経てなおも多くの人の関心を集める組織、新選組は皆さんもご存知のことと思います。今回はそんな新選組の隊長の1人、斎藤一の視点で描かれた作品「誠のくに」についてご紹介したいと思います。
誠のくにについて
作者:菅野文
巻数:全1巻
あらすじ
旗本を斬った事で郷にいられなくなった若かりし頃の斎藤一は父のすすめで京に向かいます。そこで一は会津藩の管轄下に置かれた後に新選組と呼ばれることになる壬生浪士組に身を置き京の治安維持に努めます。
しかし黒船が来航して以来国内は荒れ時代の渦に飲まれて行く中で斎藤一は己の生きる道を見つけることになります。
資料に基づいた物語構成
取扱題材が実際にあった出来事である事を踏まえこの作品を描くにあたって作者の菅野文さんは多くの資料を参考にされています。その数はなんと20冊です。
また実際に会津のある福島の方々にもお話を聞かれ、作者自身が福島に赴き空気を感じられたことが分かる程に物語は現実味を帯びて描かれています。
特に会津が忠義に厚い土地として描写されている場面は本当に緊張感があり、そのままあの時代に入り込んだかのような重さがセリフから感じられます。
斎藤一と副長土方歳三の関係描写がすごい
物語は斎藤一がまだ剣術道場で剣術を学んでいた幼い頃より始まり、そして京へ来てからの動向を経て会津へと進んでいきます。
その中で一番斎藤一が密に関わるのが後に蝦夷は弁天台場にて亡くなる副長土方歳三です。
斉藤よりも早く局長となる近藤勇とともに上京した土方は斉藤に出会ってすぐその中にある侍に必要な素養、強さを見抜きます。
そして近藤をもっと高みへ押し上げるべく懐刀として重用します。
斉藤も農民出身とは思えないほどに誰よりも強い眼差しで未来を見据える土方を信頼し時に影として汚れ仕事などを引き受けます。そうして次第に内外ともに実力を発揮していく斉藤ですが、時代の波に飲まれ会津にたどり着くと1人の人間として会津のために力を尽くしたいという思いが芽生え遂に近藤局長亡き今最後まで新選組を支えてくれた会津に恩を返したいと斉藤は蝦夷へと向かう土方と袂を分かちます。
ここまでの描き方、それがこの誠のくには非常に繊細です。
女性ならではの緻密さが感情のほんの少しの動きをも拾い上げ表情一つで何を考えているのか、どれほど心を動かされているのかが分かります。
この心理描写は少女漫画だからこそ描けると感じます。
もっと新選組が好きになる
私もゲームで新選組を出会って以来5年以上新選組を追いかけています。関連記事やテレビは出来る限り鑑賞し、京都在住のため関係する史跡も多く巡りました。
資料館には3度も足を運び、中でも最終的に大正時代まで命を燃やした斎藤一は自分も会津に骨を埋めたいと思わせる程に好きな人物です。
それがこの誠のくにを読んでますます好きになりました。
誰よりも実直に、不器用ながらも己の信念を信じて剣を振るった最後の侍、そんな斎藤一ひいては新選組の思いが皆さんにも伝わると思っています。