とんでもなく個性的なキャラクター達が織り成す、王道学園恋愛マンガ「ルナティック雑技団」のレビュー!
ルナティック雑技団について
全3巻で一度は絶版になるも、のちに復刊.comの投票にて見事一位を獲得し、未収録の二話と別タイトルの読みきり一話、それに作者のつぶやき的なおまけ漫画ページがいくつかが新規に収録と、大変豪華な新装版全三巻が2015年7月に刊行されました。
どんな話?
学園の貴公子、天湖森夜。超絶美少年で、類まれなるカリスマ性を持ち、目を合わせただけで相手を失神させられるほどの魅力の持ち主。そのオーラは学園の生徒のみならず、幼い頃からスパイ教育を受け、あらゆる世界の闇の情報をかき集め、マフィアの脅しにもゲシュタポの拷問にもビクともしなかったはがねの精神力を持つミスターXをも一撃で卒倒させるほどの力を持つ。
そんな森夜くんの家にひょんなことから居候することになった星野夢実ちゃんを主人公に、学園全体と森夜くんのお母さんを巻き込んだドタバタなラブコメが繰り広げられます。
どんなところが良いの?
なんといっても作者岡田あーみん氏の独特でたぐいまれな言語センスがあちこちで光りまくっているところじゃないでしょうか。
とんでもなく強烈なキャラクター達から出てくる語感リズム感ともに秀逸なせりふは、一度読んだら忘れられないほどです。わりとニッチな作品ではあるのですが、信者も相当数いて、印象的なせりふをツイッターなどで使ってみたら隠れあー民(あーみん先生のファン)が必ず反応するでしょう。
そして、何度も書いてきましたが、とにかくキャラクターが濃い!です。
森夜くんだけではなく、息子を溺愛しすぎて、その無限のエネルギーを全力で夢実ちゃんと張り合うことに使う森夜お母さん。夢実ちゃんとの愛の逃避行を想像して転げまわる、歌って踊れる学園のアイドルが職業な愛咲ルイくん。森夜くんに恋してる大金持ちのお嬢様、成金薫子と謎の執事・黒川さん。などなど……
みんなの奇行が折り重なって変人たちの協奏曲ができあがるのですが、かれらは皆つねに全力です。全力で生きているさまがはたから見ると奇行に映るのですが、その全力さと根っこのところに垣間見える人の良さで、どのキャラクターも非常に愛しい人たちとして成立し、楽しい世界を私たちに見せてくれます。
メインキャラだけでなく、一度か二度くらいしか出てこないモブキャラもすばらしくいい味出してます。
夢実に嫉妬してゴミ箱を蹴り飛ばすクラスメートのチーコは、かわいい子の背景にしかなれない世の中の全てのおブスさん達の言いたいことを簡潔かつ的確に言い放ってくれるし、ルイの取り巻きゴロミくんは、適当に描かれた顔と気の抜けた話し方で油断させておいて大事なところで天井から落ちてきてみんなを窮地から救ってくれるし、夢実ちゃんが売り飛ばされたタコ部屋にさっそうと現れた名も無き若旦那は一ページしか出番が無いのにそのうちのたった一コマで(こいつ、絶対成功できないな……)と思わせるビジュアルと言動をしてくれるし……
とにかく、味がある人たちばかり出てきます。
どんな人におすすめ?
最近の流行りの‘ゆるい笑い‘とは正反対の、エネルギーに満ちあふれた作品ですので、ある程度人を選ぶ面はあると思いますが。が、あえて言うならキャラクターの動きよりもせりふで笑いたい人に合うのではないでしょうか。もちろん、動きも面白いのですが。
無理に変なことをして笑わせるのではなく、そのキャラなりの必死で本気の行動が天然でおかしい。そんなギャグを読みたい人におすすめです。