今回は、日本を舞台としながらファンタジー感満載の学園もの「木陰くんは魔女。」をレビューしたいと思います。
木陰くんは魔女。について
作者:小森羊仔
巻数:全3巻
簡単なあらすじ
この作品の主人公は、日本の古びた団地に住んでいる女子高生です。
団地の屋上には管理人室があり、そこには『自分は魔女だ』と主張する謎の少年、木陰くんが。さまざまな謎をはらんだファンタジー系の少女マンガです。
ファンタジー感あふれる小森羊仔の新境地!
この作品の特徴はなんといっても、ファンタジー的な驚きに満ちあふれているところです。と言いますと、少し大げさな言い方になってしまうかも知れませんが、本作の最初のころの、少しコミカルな女子高生日常系マンガというノリからは想像もつかないほどに、ちゃんとファンタジーになっているのです。
人によっては、ファンタジーというよりもメルヘンといった方が、ピンと来るかも知れません。
魔法的な要素もいろいろと出てきますし、絵的な面でファンタジーを感じさせる場面もいくつもあります。
小森羊仔の過去作には、リリカルな恋愛物である『シリウスと繭』や、ファンタジー系のお話かと思いきや、実は意外と現実寄りの話でもある『青い鱗と砂の街』などがありますが、本作はそれらとは一味違った独自の世界を構築しています。ある意味、小森羊仔の新境地と言っても過言ではないでしょう。
しかも、単に新たなことに挑戦したというのではなく、それらの新しい要素がきちんと作品に生かされているのですから、驚きです。
実は伏線が一杯!謎が解けていく驚きもあるストーリー!
一見、ただのありふれた日常系マンガかと思わせておいて、実はいろいろとさりげなく伏線がちりばめられているというのも、本作の特徴のひとつです。そういった面での工夫や技術の向上は、過去作と比べると顕著です。
そのため、作品を読み進むにつれて、次々と読者にとっての意外な事実が明らかになってくるという驚きがあります。もちろん、日常系マンガには日常系マンガの良さがあるのですが、本作は見かけとは裏腹に、意外とエンターテインメント系の作品であると言えるかと思います。
また、単にテクニックや構成面での向上が見られるというだけではなく、登場人物の想いの鮮烈さや、それぞれの思いが交錯する模様などが描かれている点も魅力のひとつです。そういった意味ではドラマチックな作品であると言うことができるかも知れません。
謎や伏線はその性格ゆえに最初は隠されており、そのため、一見、地味にも思えるのですが、しかし、読んでみると意外と面白い作品だなあという印象の作品です。