たった一人だけの大切な人と一緒に生きる、これは誰しもが望む幸せですよね。今回ご紹介するのは、各国が勢力を争う激動の時代、正妃の娘として生まれた「亜姫(あき)」と奴隷の少年「薄星(はくせい)」の強いきずなと純粋すぎる恋の物語です。
時代と身分に振り回される二人の運命に心揺さぶられるこの物語について、レビューしたいと思います。
女王の花について
作者:和泉 かねよし
巻数:全15巻
簡単なあらすじ
この作品の舞台はその昔、亜国、土国、黄国、曾国という4つの国が勢力を争う激動の時代。亜国で正妃の娘として生まれた亜姫ですが、それを妬む第二王妃の土姫によって、病弱の母とともに宮殿の隅に追いやられて貧しい生活をしていました。
そんなある日、亜姫は金の髪と天の色の眼を持つ奴隷の胡人(異国の人)・薄星と出会います。この時代、胡人は人々から差別や嫌がらせを受けていたのですが、亜姫は薄星のことが気になり、守ろうとします。そんな亜姫に薄星は「おれの一生はあんたのものだ」と忠誠を誓い、二人は強いきずなで結ばれていきます。
亜姫は母のためにも父の気を引こうと、出会った謎の男・青徹(せいてつ)の元で学術・武術を学び、また薄星も亜姫を守り抜くためにそこで特訓の日々を送ります。しかし、そんな二人に数々の困難が降りかかります。心の支えでもあった母を土姫に毒殺され、また認められたい一心で実力を見せつけた父からは反感を買われ、亜姫は亜国から黄国へ人質として追い出されてしまいます。
絶望の淵にいた亜姫をいつもそばで支え続けた薄星の励ましで、亜姫はいつか亜国へ戻って最愛の母の命を奪った土姫への復讐を誓います。
徐々に変化していく亜姫と薄星の心情が見どころ!
この作品の見どころは、なんといっても亜姫と薄星のお互いを想い合う姿です。自分に危険が迫ると薄星の身を案じて遠ざけようとする亜姫に対して、ひたすらまっすぐに亜姫への忠誠を誓い離れない薄星。
その気持ちが徐々に仲間意識や主従関係ではなく、恋心と気付き、二人の距離は主従を超えた深い絆でつながっていきます。
しかし、姫と奴隷という身分の差や、各国の政略と勢力争いに巻き込まれ、結ばれてはいけないとても切ない恋に胸が締め付けられてしまいます。
幼いころからおまじないとして二人の胸に刻まれた「千年の花」。千年に一度だけ花を咲かせて、どんな願いも叶えるとされているこの花に、亜姫、そして薄星が願った想いとは、添い遂げる未来なのか、別々の道を歩むことになるのか……。
二人の進む道を見届けたい、そんな想いで心をつかまれる作品です。
こんな人におすすめ
国の命運と自分自身の想い。その間で揺れ動く二人の想いを描いたこの物語は、大切なものが一つではなくなった大人の女性に是非おすすめしたいです。仕事、恋、家族などたくさんのことで悩んでいる人に、読んでいただき、大切なものを見つけるきっかけにしてもらえればと思います。