今回はクラシック音楽を題材とした、幼なじみとのライバル関係を描いた「いつもポケットにショパン」をご紹介したいと思います。
いつもポケットにショパンについて
作者:くらもちふさこ
巻数:全3巻
簡単なあらすじ
主人公の須江麻子と幼馴染の少年・緒方季晋(としくに)は子供の頃とても仲が良く、二人でよくピアノを弾いて遊んでいました。その時の思い出の曲がショパンの「雨だれ」だったのです。
しかし、季晋は小学校卒業後、母と共にドイツへ留学してしまいます。留学先で列車事故に巻き込まれた季晋は重傷を負い、そして母を失ってしまいます。その後日本で再会した二人でしたが、季晋は麻子をライバル視するようになり彼女に対する態度は以前とがらっと変わってしまいました。
見どころは丁寧な心情描写
「あなたは天才ではない」と周囲から言われて育った麻子のコンプレックスや天才ピアニストである母親との確執、そして幼なじみの季晋の態度に翻弄される彼女の複雑な心情など、読んでいてとても胸に突き刺さってきます。
ごく普通の女の子である麻子が悩みもがき苦しみながらも、自分なりに模索し才能を開花させていく姿はとても感動的です。
また、麻子だけでなく幼馴染の季晋や彼の母、そして麻子の母・愛子の心情も痛いほど共感できます。優しい言葉や態度で接することだけが愛情表現ではないのだと、作品を読んでしみじみ思いました。くらもちふさこ先生の繊細で綺麗な絵柄も、作品世界にとてもマッチしています。
作品を読んで得られたこと
この作品を読んで、私は生きていく勇気をもらいました。正しい方向に導いてくれる人がいれば努力は必ず報われる、天才ではないからこそ見えてくるものがある、周りの人は思っている以上に自分を気にかけてくれている、確執のあった人とも願っていればいつかは打ち解けることができるなど、作品を通じて暖かいメッセージを受け取ることができました。
今思い悩んでいることがある人にぜひ読んでほしい作品です。読み終わった後、爽やかな涙が流れ気持ちがすっと軽くなるはずです。
私自身も、何か辛いことがあってめげそうになったとき、この作品を読んで自分を勇気づけています。