今回は、少女マンガの枠にとらわれない不朽の名作である『BANANA FISH』についてレビューしたいと思います。
BANANA FISHについて
作者:吉田秋生
巻数:全19巻
簡単なあらすじ
ニューヨークでストリート・キッズを束ね、IQ200の知能に人並み外れた戦闘力、そして美しい容姿を併せ持った少年アッシュ・リンクス。
今まで歩んできた過酷な人生からか、孤高のリーダーであったが、日本から来た純粋でひたむきな少年、奥村英二と出会い、すこしずつ変わっていく。マフィアとの抗争、麻薬、民族対立・・。
少女マンガとは思えない息をもつかさない展開に飲み込まれていきます。
主人公アッシュの魅力にとりつかれる
なんといっても、この漫画の最大の魅力は、主人公アッシュ・リンクスです。
初めは絵がアメコミ風で美少年設定のはずなのに、うーん・・・という感じなのですが、もはや最終巻では別人の勢いで美少年です。
高い知能を持ち、身体能力も抜群、人を惹きつける少年の妖しくも繊細な美しさ。
たくさんの魅力ある主人公の中でも、飛びぬけて存在感のある主人公だと思っています。
生まれながらに高い才能や能力に恵まれたものの、その生育歴は壮絶です。幼いころに色々あって自尊心をずたずたにされますが、マフィアのボスに気に入られてなんとか自分の腕と才智で這い上がり、ストリートキッズたちのリーダーとなります。
誰も心からは信じられない環境で、必死に生きてきたアッシュ。すべてを疑って生きてきました。
そんな時に出会ったのが、この漫画のもう一人の核となる日本人の少年、英二です。誰も気づかないような他人の痛みを察知して、当たり前のようにさりげなく手を差し伸べることができる英二。
暴力とは無縁の世界で生きてきた英二と、暴力が当然の世界で生きてきたアッシュは、光と影のような存在だったはずです。
一緒の時間を過ごすうちに、アッシュの声にならない痛み、孤独、怒りを感じ取った英二。
はじめて自分のすべてを受け入れて、肯定してくれる存在に、アッシュもいつしか心から信頼を寄せるようになります。そして、そんなアッシュの姿に英二自身も自分の存在理由を見出すことが出来たのです。
英二自身も、ニューヨークに来たのは、本気で取り組んでいた棒高跳びをけがのため断念さざるをえなくなったことが原因でした。自分の価値を見いだせなくっていた英二にとって、アッシュの最大の理解者で守っていくことが自分の存在理由だと思えるようになったのです。
なんだか、ボーイズラブの雰囲気も醸し出してますが、そんな薄っぺらいものではないんです。
きっと、恋愛感情とは全く別次元の、お互いがお互いの半身であるような関係性だったと思います。
そして、そんな2人だからこその最終話は涙なしでは読めません。これを読まない人生なんて、大損だと言い切れます。
こんな人におすすめ
少女マンガと侮ることなかれ!男性が読んでも、きっとはまってしまうと思います。
幅広い世代、性別を問わず読んでもらいたい作品です。