今回は、1985年から1990年にかけて「LaLa」で掲載された「成田美名子」さんの「CIPHER(サイファ)」をレビューしたいと思います。
簡単なあらすじ
舞台はニューヨーク。頑固だがで優しい女の子「アニス」が、同じ美術学校に通う人気者の俳優兼モデル「シヴァ」と友達になる場面から物語が始まります。
交流を深める中、アニスは偶然、シヴァが彼の双子の弟「サイファ」と入れ替わって通学していることに気づきます。その理由を答えないシヴァに対し、アニスは2週間の同居を申し入れ、その間に双子の見分けがつけば真相を教えてもらうが、逆に自分が負ければ今後一切詮索しないと約束します。
アニスには、2週間で真の友達になり、双子の判別がつくようになるはずだ、という信念があり、その信念を賭けて挑んだ勝負でした。この件以降、お互いだけを信頼して暮らしてきた双子のシヴァとサイファにアニスという他人が加わり、双子の関係性が変わりはじめ、やがて心境の変化が訪れます。
そして双子が入れ替わっていた理由や過去が、次第に明かされていくのでした。
CIPHERについて
作者:成田美名子
巻数:花とゆめCOMICSは「全12巻」、電子書籍等の愛蔵版「全7巻」
人間性の明暗が上手く混ざり合う物語が見どころ!
この作品はなんといっても「他人とは上辺だけ仲良くしていればそれでいい」と思っていた双子のシヴァとサイファが、「人間は思った事を言い合って理解しあう事が大切」という信念の女の子アニスと交流することにより、心境が変化していく様に心打たれます。
次第に明かされていく過去の事件により、他人を全く信頼せず、双子だけで支えあって暮らし、入れ替わっている理由も明らかになっていくのですが、そこにアニスがいい形で干渉し、真の「友達」として、双子にかかった呪いを解いていくのです。
表紙やイラストカット等を見ると、ポップでアメリカンテイストな青春恋愛マンガ風の同作ですが、中に込められているテーマ性はかなり重く、アメリカではありがちな過ちや成功者でも陥る過酷な状況等も背景に描かれていて、とても読みごたえがあります。
こんな人におすすめ
根底に流れるテーマは深いものがありますが、ストーリー自体はテンポがよく、キャラクターを活かすエピソードにも説得力があり、魅力的に描かれています。
今となっては絵柄が少し古く感じられますが、描き込まれた背景も綺麗で丁寧なので、読んでいて心地よく、一方でずっしりとした読み応えもあります。
物語の後半はシリアスなシーンも多いのですが、キャラクターの意識の成長や結末に至る道のりも自然で読後感はよく、心に響く作品が読みたいという方にオススメです。