私が紹介したい作品は少し古いですが、宮脇明子が描いた「ヤヌスの鏡」です。
あらすじ
主人公は女子高生で、複雑な大人の事情により、祖母によって厳しい監視をされながら育ちました。あまりにも精神的に辛すぎて、二重人格になってしまった彼女は、真面目な自分とは全く別人格の、もうひとりの自分を生み出してしまいました。
鏡が割れるのを見ると、幼い頃に祖母から受けた仕打ちを思い出し、意図せずに別人格へと変身するのです。
感想
まだ小学生ぐらいの頃、実写化されたドラマを観て、大きな衝撃を受けました。大人になってから古本屋で「ヤヌスの鏡」の漫画を見つけて、その衝撃を思い出し、購入して読んでみました。
ドラマよりも漫画のほうが理解しやすくて、一晩で一気に最後まで読んでしまいました。
この作品の見どころは、人の心の闇と葛藤が上手に表現されていることです。これまでの少女マンガにはなかった、心理学的要素がストーリーを構成していますから、大人でも読み応えのある作品なのです。
読み続けるうちに、架空の世界ではなく、キッカケがあれば誰にでも起こり得る心理現象なのだと分かると思います。忍耐力には限界があり、度を超えてしまうと、行き場を失った心は暴走をはじめ、バランスをとるために、正反対の自分を生み出すのです。
主人公ほどではありませんが、私自身も厳しい両親に育てられましたから、思春期の頃は、この心理現象に近い何かを感じていました。
「もっと強い自分にならなければ」と考えすぎると、精神的に追い込まれ、自分でも気づかない間に悪いことをしたり、あり得ない行動をとったりするのです。そんな自分は精神病なのではないかと不安に感じたこともありました。
でも、この作品を読んでから不安感がなくなり、むしろ当然のことだと理解することができたので、とても救われました。
最終的に、主人公はもうひとりの自分に打ち勝つことができますが、私はまだ、別人格が心の中に存在しています。それでも怖いというイメージはなく、そうやって心のバランスを保っているなら、強引に消す必要はないと思っています。
こんな人におすすめ
「ヤヌスの鏡」は、何かに悩んでいる人にお勧めで、頭で考えるよりも、心が感じたままに解消してくれることを教えてくれます。
今の環境から逃げ出したいと思っている人には、ぜひ一度読んでもらいたい作品です。