失恋のショコラティエについて
作者:水城せとな
巻数:全9巻
あらすじ
小動爽太は高校時代から4年越しで片思いをしていた先輩のサエコと付き合うことができました。しかし、チョコレート好きのサエコのために、渾身のチョコレートを作るも、バレンタインデー前日にあっさりとフラレます。大きなショックを受けた爽太は勢いのまま渡仏し、有名なショコラトリーで修業に入ります。
5年後帰国し、実家のケーキ屋をチョコレート専門店としてオープン。オーナーシェフとして店を持つまでに成長します。しかしサエコのことは忘れられず、色々な手法で彼女の心を掴もうと試行錯誤します。
この物語を簡単に説明すると、高校時代から好きな女の子の気を引くために、ショコラティエになった妄想しがちな男子の話なのです。
感想
1巻を読んだ時、キャラクターたちの会話が素晴らしくて、一気に夢中になりました。はっと意表を突くような言動、普段言語化できない渦巻く感情を瑞々しく的確に表現してくれるところがたまらなかったのです。それらを見事な演出でみせてくれます。
たとえば1巻では、サエコの結婚式の打ち合わせの後にはしゃぐ爽太に対して、普段はくだけた表情のフランスから一緒に連れてきたオリヴィエに「恋は人生を彩るものではなく、人生そのもの」と言われます。
恋を主題にした物語がこんなにも溢れているのに、人生であるように真正面から言い切るマンガは、今までになかったなと斬新な気持ちになりました。
また、爽太が「やってもやらなくても後悔すると思ったから、やらないで後悔する方を選んだ」と言った選択肢も目からウロコでした。大抵はやらずに後悔して、どうせ後悔するならやれば良かったと地団太を踏むものですから。
例を挙げだすときりがないほど、失恋ショコラティエには新しい価値観が溢れています。
中盤までは同じ職場で爽太に片思いをしている薫子や爽太のセフレでモデルのえれなに感情移入してサエコを悪い女として見ているのですが、サエコの生活が分かると見方が変わります。
皆がそれぞれに長所も短所もあり、人間味に溢れています。だから不器用に片思いしあっている姿をハラハラしながら読み進めてしまいます。
身近な距離での恋愛模様の話ですが、波乱と彩りに満ちています。何回も読み返したくなる素敵な言葉が溢れた少女マンガです。