今回は明治期を舞台とした物語である、「明治緋色綺譚」のレビューをしたいと思います。
明治緋色綺譚について
作者:リカチ
巻数:全13巻
あらすじ
家柄の良いところで育ち、遊郭へ売られた「鈴」と、その子を見受けした呉服屋の老舗である藤島屋の長男の「津軽」との、優しい恋物語です。
鈴と津軽、頭脳明晰な2人の恋の行方が見どころ!
鈴と津軽は人周り以上年が離れています。鈴の幼い頃に、鈴の姉と関わりがあった津軽は、「縁だから」と理由だけで、莫大なお金を払って鈴を遊郭から見受けし、成長する鈴を見守っていました。
鈴は早いうちから津軽に対して、家族とは違う感情を抱いていました。しかし、小さな女の子を見る津軽の姿には、全く恋愛感情はなく、見ている読者もモヤモヤしたり、鈴の気持ちに共感して切なくなったりします。
鈴は子供ながらにどこか大人びた一面を持っていて、普通の大人より頭もよく、それでいて、純粋すぎるくらいの女の子です。鈴の大人びた姿は、おそらく人周り離れた津軽への思いから必死に背伸びをしようとしていることで自分を津軽に少しでも近づけようとしているのか、はたまた鈴は元から少し考え方が大人びていたのか、そういった主人公の心理を探ることが楽しかったです。
津軽は少しちゃらんぽらんな性格で、結婚適齢期でもあるのにも関わらずに、遊び呆けているような男性です。藤島屋の長男でありつつ、全く店を継ぐ気はなく、趣味の骨董品を集めながら便利屋を営んでいました。
そんな津軽の姿に手を焼き、細かな世話をする鈴がとてもいじらしくて可愛いです。しかし、いざという時に頼りになるところや、ふとした時にどこかいなくなり、何をしているかわからないようなミステリアスなところがあり、それでいて顔が綺麗なので、津軽は女を惑わす要素を持っています。鈴が津軽を気になる理由がとても共感できます。
様々な出会いや出来事の中で、鈴は凛々しく、たくましく成長していきます。その中で、いつの間にか鈴のことを女性として心に映し出す津軽。ただの小さい女の子から、大切な女性へとなっていく津軽心の移り変わりが、もどかしくも切なくて、キュンとくる要素が沢山あります。
大人の女性に是非読んでほしい!
明治緋色奇譚は、続編で明治メランコリアがありますが、どちらも大人の女性に読んでもらいたいです。合計で20巻以上ありますが、場面展開が著しく、とても先が気になる内容になっているので、最後まで一気に読んでしまいます。
少し難しい表現や、恋愛の複雑な心理要素があるので、ただ読み進めるのではなく、主人公や他のキャラクターの心理を想像しながら読んでほしいと思います。