そんな高校での日常生活の変化が引っ込み思案だった女の子に運命の出会いをもたらします。これはどこにでもいそうな女の子がクラスという空間で運命の人と出会う、でもとても軽やかな初恋物語。
天晴について
作者:河原和音
巻数:全1巻
あらすじ
とにかくとっても引っ込み思案で周りからも大丈夫かと言われてしまう、おとなしいタイプの千秋。彼女は人と話すのが得意ではないというのに、高二のクラス替えで、ほとんど誰も知らないクラスになってしまうという極限状態に。
そんなとき、元クラスメートからこんなことを聞きます。「ラッキーだよ!」「後藤の隣だよ!」。彼女の真横の後藤君。彼は誰もが知ってる人気者だったのです。
隣同士の席で題をやってこなかったのに指名されて困っている後藤に授業中にノートを見せてあげたり、はたまた持っているドーナツを狙われたり。
彼女はあっけらかんとした後藤の明るさに引っ張られて次第に新しいクラスに自然になじんでいき、そしてふと後藤からこんなことをいわれます。後藤の読めなかった天晴の文字。その読み方を後藤に教えてあげた後に千秋はこう言われます。
「国語の先生にでもなるの?」
恥ずかしがりながら打ち明ける千秋に後藤は一言こういいます。
「向いてるよ!」
その前向きで明るい肯定と励ましに、千秋は自分で自分の可能性を閉ざしていたことに気が付きます。少しずつ、でも確実に近づいていく二人の距離。ぎこちない道行を二人の周囲がうまくつないでいきます。結末は題名通りのすがすがしさです。
見どころはここ!
それまで思いもよらなかった、初めて本当に人に恋する心。
千秋の日々の戸惑いや自分が流している涙の意味を自覚するモノローグは、10代だからこそ経験する初々しいものです。痛々しさにも満ちています。
高校生活を送ったことのある人ならだれでもどこかに思い当たりがある、そんなビビットな切なさに満ちたコマの連続が見どころです。
それに対してとにかくのんきな後藤。でも彼もまた内心では思いがけない展開にものすごくドキドキしてます。
しかしそれを千秋にはちっとも気が付いてもらえない。ラストにため息をつくこの二人の感覚の違いが明確に描き分けられている最後が作品のさわやかさのクライマックスです。
こんな人には絶対おすすめ!
これは超有名漫画家・河原和音の初期コミックス。
多作で多彩な河原ワールドにおいて、女の子の気持ちの揺れ動きの切り取り方はどれも秀逸ですが、天晴は初期作品であるだけにそのエッセンスが短いなかに凝縮されています。
今現役女の子、はたまた女の子だった時の気持ちを思い出したい人、女の子の気持ちが知りたい人におススメです!