あなたは今幾つですか?まだ高校生とか中学生かもしれませんね。この漫画は高校生と50代の主婦が入れ替わるという奇想天外な内容です。
体は高校生、内面は中年のおばちゃん。
そんな主人公に翻弄される周りを描いた『秋日子かく語りき』をレビューしたいと思います。
秋日子かく語りき
作者:大島弓子
巻数:全1巻
あらすじ
高校生の秋日子はある日交通事故に会い死んでしまいます。神様のお使いと言う天使の前に行くと、そこには見知らぬおばさんが。
それは秋日子とともに事故にあった被害者で天使が言うには本当は秋日子は死ぬはずでは無かったから、もと来た道を帰りなさいと。そしておばさんのほうだけ連れて行こうとするのです。するとおばさん絶叫してしまいます。
「いやですー!私はまだ死にたくない、私はあんな人生全然納得していないんです!」
それを聞いて根の優しい秋日子は少しの間だけ私の帰り道を貸してあげられませんかと。天使は呆れますが承諾してくれるのでした。おばさんは竜子さんと言います。
一週間だけの約束をして竜子さんは秋日子の体を借りる事になったのです。
見どころ
皆さんはご自分が死んだ後、周囲の人がどういう反応を示すのか気になりませんか?竜子さんは秋日子の体を借りて自分の家族に会うのですが生きている頃には分からなかった家族の本音を聞くことになるのです。
小学生の次女はこれからはうるさい事言われないで自由になれたと言うし、社会人の長男は母の方が死んで若いあなたが助かって良かったと。母の人生なんてなんでしょう、でもあなたはまだ可能性が無限にあると。悲しいですよね。
でも意外とこんなもんかもなあと思ってしまいます。竜子さんは旦那さんと顔も見ずに結婚したのです。戦後の事で青春らしい事は何も出来なかった。それが竜子さんの心残りでした。
このままでは竜子さんが可哀想すぎるのですが、最後に救いがちゃんと用意されているので安心して読んで見て下さいね。
この漫画の見どころは若いから可能性が無限にあるのは本当か?という所かもしれません。竜子さんだってかつては若かったのです。
でも、様々な社会情勢や本人の資質や生まれた環境によって可能性は狭められます。無限というのは言い過ぎです。でも自分が若い頃はなりたい物になれると思っていたりします。私達に出来るのはその時その時でベストを尽くす事だけです。
普段は忘れているその事をこの漫画は教えてくれると思います。
こんな人に読んでもらいたい
漫画と言っても内容が深いので小説を良く読む人にも手応えを感じてもらえると思います。特にお勧めは社会に出て間もない20代前半の方。
社会の厳しさを目の当たりにしている方などは感じるものがあるかなと思いますね。私の場合は学生の頃に読んで、あまりピンと来ませんでしたがその後30歳くらいになってこの作品の良さが分かるようになったのでそういう読み方もあるかと思います。